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留めるのも外すのも面倒な服を支給されたと文句を言っていた彼を思い出した。
彼は大きく前の開いた黒いシャツに手をかけ、人を殺す人間とは思えない綺麗な笑顔を浮かべた。屈託のない、純真な無垢な、笑顔。
百点満点の笑顔。百点満点に花丸を加えたような笑顔。彼のボブカットがふわりと揺れた。
彼は自身のその髪に負けず劣らずの腹をなでる。彼は二コリと笑った。
「僕、内臓が白いんだ。」
僕は霞む目を見開いた。
連れて行かれそうな意識を必死でつなぐ。
気なんてそんなものなくしている場合じゃない。
「引くなよ。」
彼は苦笑いを浮かべた。
「青凪は入れ替わりがなかなか激しくてね。あの学園でずっと生きてるのはヤンキー学校で停学にならないレヴェルに凄いことなんだけど、加えてクラス分けが半端なく入り組んでるし。実践ばっかであったことない奴もたくさんいるし。
だから青凪で幼馴染って言えるくらい一緒にいる奴なんて山葵(やまあおい)くらいだった。僕の幼馴染。関原山葵(やまあおい)。あいつは僕と同じ学年で3つほど年上だった。
山葵はだいぶファンキーな女で、顔も可愛いし体も言うことなしにエロかったんだよ。ボンキュ、ボン。でもあいつはただエロいだけじゃなくて、最低な変態だった。
僕、年上のエロい女大好きだけど、あいつの変態具合には恐れいったね。怖気づいたね。」
細く筋張った彼の白い人差し指が、彼の顔の横で上を指していた。
「あの女は殺さない、死なないことに特化しているばかりか、人が死なねえのをいいことに体ん中から表面、血管に至るまでいじくりまわす変態女(マッド・サイエンティスト)なんだから。」
彼はその白い人指し指を顔の前に近付けると、口に入れ、その鋭い犬歯でブチリ、と噛み切った。
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