ありきたりラブロマンス

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「今からするのは僕の昔話だよ。つい数年前のことから全前世のことまで嘘を織り交ぜつつ話す、聞くも涙。語るも涙。涙々の物語さ。あ、そういや涙って二つ並べて真ん中に小文字のオメガ挟むと“号泣してる人”みたいじゃなあい?まあそんなことはどうでもいいや。」 彼はつらつらと、まるで台本の台詞を読む役者のように実につらつらと語りだした。 僕は腹からぼとぼと落ちる自分の血を指につけてジーパンのポケットに入っていたローソンのレシートに涙とオメガを描いた。 涙ω涙 「……号、泣……して、る……か?」 僕は息も絶え絶えに言う。 僕の腹に刺さるでかい持ち手の短い槍はテカテカと赤く染まっていた。 「まあいいんだって、僕の話聞いてって。あー、えーとー、今から話すのは僕と幼馴染の女の子との愛のお話でえ、今世紀最大のラブ物語……ってもう言ったっけ?」 彼はまあいっか。と適当な回答で自問を閉めくくり赤いマルボロの箱からだしたタバコをくわえ火を付けた。 薄汚れたナースステーションの受付台の上にチョコンと座る150センチにみたいであろう小さい彼の手に、赤いマルボロの箱は不釣り合いのように思えた。 だけどこんな手が、殺すのだから、世界は不思議だ。 この少し筋張っているがその身長通り平均より大きいとは言えない手が、色々な物をなぎ倒すのだから、世界は不思議だ。 「どこまで言ったっけ?あり、どこまでも言ってないっけ?まあいいや。とりあえず僕は滋賀県のありふれた片田舎に生まれたんだ。個人情報だから、詳しい住所は明かさないけどいいよね?」 僕は廃病院の薄ピンク色の床につっぷしたまま、ああ。とだけ言う。 彼は満足したようにそうか。と笑った。 「そうだね、父親は普通の町の役員で片道三十分かけて町の役場まで週六日、ん?週休二日制が導入されてからは週五日か、まあそんな感じでさあ。母親は家の農業を手伝ってたね。祖母祖父もだ。僕の家農家だったから。 そんで、僕はその家に小学二年の時までいたんだ。小学校入学してそこで友達もできた。 友達。うん、いい響き。僕にもいたんだよ。友達。ふふ、今いないみたいないいかたするなよ。
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