ありきたりラブロマンス

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彼は自分の、余すところなく白く染まった肩上のボブカットの髪をくるくると指に巻きつけた。 「まあ、それからはあの学校に入ってエレベーター、ん、エスカレーター?まあ、それ式でお仕事をしていくことになるんだけど、それはお前だって多少は知ってるだろ?」 俺は、どうしたって動きにくい彼に痛めつけられた首を動かし肯定し、それから「多少な」と付いた情報を提示した。 「そうか、そう。じゃあ、さらに詳しくほり下げてく。僕にはまだまだ時間があるからね。時間があるんだ。僕には。」 彼はナースステーションの看板を見つめたまま受付台から飛び降り、火をつけただけの、まだ一口も吸っていないタバコを踏み消した。 タバコの長さは多少なりとも変わっているが、それはとても意味のない行為だった。 「小学生の僕を校門前で待っていたのは厳つい大人だった。黒いスーツにサングラス、スキンヘッドのいかにもー、ってやつ。いかにもヤクザーってやつ。想像できるか?衝撃ったらなかったね。 驚きと恐怖。想像を絶するよ。なてったって僕はそのとき小学二年生だったんだから。 校門を出たらな、その男たち、五人くらいね。五人のヤクザ共とでっかいリムジン無論真っ黒の。で、俺は連れてかれたの。無理やり乗せられて、足もたれて手もたれて担がれて。僕は粗大ゴミか!ってなあ。 で、僕はなすすべもなく、そのリムジンに乗って体感的には何時間も、もう何年も。遠い遠い国に連れて行かれた気分だったよね。」 彼はうんうん、と頷いて僕の方に視線を向けた。 「ほんで、こっからが本題。いんにゃ、今までもお前が知りたい僕の片りんだったことには変わりないぜ? 実際しれて万々歳だろ? でもこっからはマジで大事。やっと僕が出来上がる。涙涙涙のお話。 救いようがねえぜ?救うやつもいねえぜ?救われようとも思わねえぜ。」 いつの間にか僕に近付いていた彼は楽しそうに僕の足を蹴り飛ばした。 「おら、寝てんじゃねえよ。寝ないでよ。僕の話しがとちゅうだぜ!」 1メートルほど吹っ飛んだ僕の体は壁に跳ね返って面白いほどピッタリと元の位置についた。
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