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着いたら、俺の部屋の前に元久が立っていた。
「なーちゃんの活躍、見てたよぉ」
「だからなんだ」
「んー、やっぱぁ、気になるんだよねぇ」
「お前の部屋で話すか」
「りょおかい~」
どうせ隣同士だし。
何かあったらドアでも壁でもぶち抜けば良いだけだ。
「あー、えっと・・・さ、いきなり聞いていいもんなのか分かんねぇんだけどさ」
「とっとと話せ」
珍しくかなり歯切れが悪いな。
「うーんとさ、浪ってもしかして・・・こっち側の人間?」
こっち側・・・元久が指しているのが裏社会だということくらい誰だってわかる。
だが、俺は・・・。
「敢えて言うとしたら、どっちつかずだ」
「・・・そんなの有り?」
「お前はどっちだと思う?」
「分からないから聞いてんじゃんか。怒られる事覚悟で暴露するけど、浪について何度かハッキングしてるんだ」
「知ってる」
一瞬、元久が間の抜けた顔になった。
が、直ぐに戻した。
間の抜けた顔が面白くて、もう少し見てたかったというのはこの場において不謹慎だから黙っていた。
「え、えっと、だけど、浪のデータは何にも分からなかった」
だろうな。いかに元久が優秀なハッカーでも、俺のデータは盗めないだろう。
元久はまだ、あの人に追い付いてないから。
だから、俺のセキュリティを突破出来ない。
「浪ってさ」
「話は此処までだ、天才ハッカーさん」
元久とはそれなりの付き合いだから、こう言えば下らない会話が終わる事くらい理解している。
そして、そう言えば、
「必ず見つけてやるから」
「勝手にしろ」
不敵な笑みを見せる事も。
でも、今はやらなきゃいけない事がある。
「元久・・・チョコを少し分けてくれ」
「・・・は?」
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