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「依頼完了だな。しっかし何故こんなに狼がいやがんだ?」
狼は時折飢えた腹を満たすため人里を襲うとはいえ、群れをなしていても6~8匹が普通である。
が、今回は15匹もの狼が出現したのである。前例も無いため、これは異常の部類に入る。
うっすらとした、しかし確かな頭の中を不快にさせる予感は頑固に染み付き、拭うことが出来ない。
見て分かることと言えば、獣たちの気配が常に忙しなく、青年以外の何かから逃げるように動き回っている事であった。
青年は少し考える素振りを見せるがすぐにやめ、森を出るべく歩き始める。
暫(しばら)く同じような景色が続く事にうんざりしながら歩いていると、不意に二つの人影が目に映った。
一つは木に背を預けるように座っており、力尽きたのか人が持っている気配というのが感じることが出来ない。
そしてもうひとつの人影は、もう片方の人影に足の裏を叩きつけ、鈍い音を作り出した。
幹に黒い染みを残して、蹴りを受けた人影は重力に従って地面へと崩れ落ちる。
不審に思い、頭の奥にチリチリと焼けるような感覚を抱いたまま、青年は警戒しながら近づいていく。
そこには血で染まった顔をした人が白目を見せ、無惨な姿をしていた。
その人であったろう死体は恐怖に染まった顔をして倒れていた。傍らには、所持していたであろう拳銃が落ちていた。
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