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「アンタ、なにやってんだ?」
先程まで死体に何かをしていた人物は、青年の方に顔を向けるとあからさまに溜め息をつく。
暗闇のせいではっきりとは姿を確認することは出来ない。
のっそりと体の向きを変えた人影は、頭を掻きながら青年を見る。
「全く…。あんまり仕事を増やさないでほしいね。」
覇気のない顔をしたその人物はうんざりしたように渋い声で文句を垂れる。
「どうゆうこ…ッ!?」
青年が言い終わらぬ内に風を斬る音が耳に届き、咄嗟に腕を右に動かし防御する。
が、あまりの衝撃の重さに受けきれず、青年の足は地を滑る。
右腕に走る痛みと痺れに青年は顔をしかめ、僅かに驚くがすぐにその犯人を鋭く睨み返す。
事の原因である人影はこちらも驚いた様子を見せ、振り切った足を地面へと下ろす。
「不意打ちだったのになぁ。おじさん少し傷ついたよ」
おどける人影に対し、青年は目線を逸らさずに右腰から刀を一本鞘から抜く。
鋭く伸びた剣を人影の顔に向け、手に力を込める。
月明かりによる鈍色が目を突き刺すと共に、剣にも劣らない鋭利な声を吐き出す。
「――ッざけんな。訳わかんねえが、要するに目撃者は潰すってか。悪ぃがテメェがそのつもりなら、こっちも容赦しねぇぞ」
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