第一話「始点への手綱」

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言い終えた直後、闇の中に目映い明かりが生まれる。 青年の刀に鋭く光る雷が走り、辺りの暗闇を切り開く。同時に、刀にも雷光に当てられ、その刃が鈍く輝く。 人影の顔が照らされ、漸くはっきりと見ることができるようになる。 暗い茶髪の人影だった人物は若くはないが、渋みのある整った顔がナイスミドルな雰囲気を放っている。 また青年の方も姿がよく分かるようになった。 闇のような黒髪に獣のような鋭い目をし、首を覆っている黒い長袖の上にコートに似た半袖の片方だけ裾が長い着物を着ており、黒いズボンにほぼ同色のブーツを履いてる。 さらに特徴的なのは、腰の帯には左右に二本ずつ、計四本の鞘と刀――現在刀は三本――を帯と体の間にさしてある。 「…覚悟しろ、オッサン」 青年が電光迸る刀を左下に構え、中年に向かって駆け出し、力を込めて斬り上げる。 「やれやれ…。困った青年だね。まったく…」 そう言い、青年が薙いだ刀に対し足を突き出すように合わせる。 わざわざ自分の脚を捨てにくる行為に驚きはするも構わず刀を振り抜く。 果たしてその対峙の結果は―― 「なッ!?」 足の裏側でピタリと剣が止まっているという事実に青年は驚愕(きょうがく)する。 中年は勢いよく踏みつけ、青年がバランスを崩したところにで腹に狙いをつけ、足を振るう。 しかし、その蹴りは青年の体には届かなかった。 腰から新な刀を素早く引き抜き、中年の足を受け止めていた。 「甘ぇよ!」 そのまま刀で足を弾き、反対の刀を中年に向けて素早く突きだす。
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