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青年は突いた刀から電撃を放ち、撃ち出された雷は中年を喰らうべく鋭く突き進む。
中年はしゃがんでかわすが、髪の毛が数本焼かれ焦げ臭いが鼻をつく。
その体勢のまま左足で青年の脛(すね)を蹴り、青年はバランスを崩した。
「おわッ!」
その隙を逃さず、中年は青年の着物を掴み下に引っ張り、殴りかかる。
――が、拳の軌道上にある鈍く光る銀色を見るや、その手が一時停止のように進行が止まる。
「へぇー。手は駄目なんだな。御愁傷様ァッ!」
否応なしに中年の背筋に、氷のような寒気が走る。
「マジかよ」
危機を察知したのか地面を蹴り、全力で飛び退さってゆく。
青年は敵を見据え不敵に笑いながら、体から高圧力の雷を解き放つ。
辺りの暗がりを、目を開けていられないほどの圧倒的な輝度が何もかもを呑み込んでゆく。
数秒後、光量が減少し視界が晴れてゆくと、そこにあったのは放たれた雷光に捉えられあちこちが焼け、煙に包まれている中年だった。
獰猛な笑みを浮かべ、
「良いねぇ~青年。そんならおじさん、ちぃと本気出しちゃうよッ!」
関心したような素振りを見せた瞬間―――、
ズズズ…
突然、中年の辺りの空気が重くなる。
まるで存在が不吉であるかのように体の周りが陽炎の如く揺らめき、身も凍る悪寒が背中を這(は)う嫌な感覚が青年の神経を刺激する。
青年は緊張感を張りつめ、あくまで冷静に、そして疑う余地もなくあの人物は危険だと認識し、刀を握る手に力を込める。
(なんなんだこのオッサン…。気味悪ぃなクソ)
戦慄する青年の頬に、一筋の汗がつたう。心の中で己に叱咤(しった)し、分泌されたアドレナリンに身を任せ、戦闘体勢を作り上げる。
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