第一話「始点への手綱」

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「ほんじゃ、続けようか」 言うなり、中年は踏み込んで青年に肉薄し、右足で真っ直ぐ蹴りを放つ。 それを刀で受け止め、中年の足の裏との間に強烈な衝撃が発生し、森の静寂を破る重たい音が響き渡る。 青年は競り合いながらも目を細め、そして、瞳に入り込んだ情報に一瞬動きを固める 刃と靴の交わる境界に――わずかな『隙間』が存在していた。 「おいおい……幻でも見てんのか、俺は…」 冷や汗を浮かべて一人ごちる。払拭するように中年の足を睨み付けながら脇腹に蹴りを振るう。 中年は当たる寸前に刀に当てた足を使い、後ろに飛び下がり蹴りを避ける。 「さぁ?種明かすと後が怖いからねぇ。終わらせてもらうよ」 青年の正面から左回り蹴りを行い、風を斬る音が青年に迫る。 青年は冷静に右の刀を逆手に持ち、蹴りを受け止める姿勢に入る。 止めた…。青年はそう確信した。 が、反対の方の脇腹に衝撃が走り、骨の軋む嫌な音を聞きながら吹き飛ばされる。 余りある勢いのまま、背中から木に体が打ち付けられる。 「――ッ!」 一瞬、青年は思考と息が出来なくなる。 体が持っているエネルギーが伝わった木が後ろに折れ、他の木々を巻き込みながら倒れて行く。 冷めない体の熱を感じながら、止まっていた脳の回転を再開させる。 (なッ…!どうなってんだ。確かに蹴りは右側だった筈だろ!ふざけんじゃねぇよッ!) 刀を地面に突き刺し、少しよろめきながら立ち上がる。血が混じった唾を吐き捨て、青年は鋭く睨み付ける。 「ホントやるねぇ青年。おじさん、ビリッと来ちゃったよ」 そう余裕綽々と言う中年の右足には煙がたっていた。 青年は攻撃が当たった直後に、中年の足にカウンターとばかりに電撃を見舞っていた。
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