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「ほんじゃ、続けようか」
言うなり、中年は踏み込んで青年に肉薄し、右足で真っ直ぐ蹴りを放つ。
それを刀で受け止め、中年の足の裏との間に強烈な衝撃が発生し、森の静寂を破る重たい音が響き渡る。
青年は競り合いながらも目を細め、そして、瞳に入り込んだ情報に一瞬動きを固める
刃と靴の交わる境界に――わずかな『隙間』が存在していた。
「おいおい……幻でも見てんのか、俺は…」
冷や汗を浮かべて一人ごちる。払拭するように中年の足を睨み付けながら脇腹に蹴りを振るう。
中年は当たる寸前に刀に当てた足を使い、後ろに飛び下がり蹴りを避ける。
「さぁ?種明かすと後が怖いからねぇ。終わらせてもらうよ」
青年の正面から左回り蹴りを行い、風を斬る音が青年に迫る。
青年は冷静に右の刀を逆手に持ち、蹴りを受け止める姿勢に入る。
止めた…。青年はそう確信した。
が、反対の方の脇腹に衝撃が走り、骨の軋む嫌な音を聞きながら吹き飛ばされる。
余りある勢いのまま、背中から木に体が打ち付けられる。
「――ッ!」
一瞬、青年は思考と息が出来なくなる。
体が持っているエネルギーが伝わった木が後ろに折れ、他の木々を巻き込みながら倒れて行く。
冷めない体の熱を感じながら、止まっていた脳の回転を再開させる。
(なッ…!どうなってんだ。確かに蹴りは右側だった筈だろ!ふざけんじゃねぇよッ!)
刀を地面に突き刺し、少しよろめきながら立ち上がる。血が混じった唾を吐き捨て、青年は鋭く睨み付ける。
「ホントやるねぇ青年。おじさん、ビリッと来ちゃったよ」
そう余裕綽々と言う中年の右足には煙がたっていた。
青年は攻撃が当たった直後に、中年の足にカウンターとばかりに電撃を見舞っていた。
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