イタミ

4/11
前へ
/11ページ
次へ
小学校低学年の頃、イジメの内容は石やボールを投げられたりするくらいだった。 イタミを感じない。 いや、感じることができない僕には『その程度のコトだ』と、片付けられていた。 しかしながらそれは、学年が上がっていくごとにエスカレートする。 教科書がバケツいっぱいの水の中に放り込まれた。 クラスみんなの前で全裸にさせされた。 机と椅子が無造作に廊下に放り出されていた。 学校に持ってきて読んでいた、僕の大好きな小説はもう、落書きだらけで読めない。 今も続くボールや石ころを使ったリンチ紛いは、言葉通り痛くも痒くもない。 けれども、ビショビショになった教科書を、親や先生にバレないように乾かしたあの日。 誰にも見られたくなかった恥部を、クラスみんなに見られてしまったあの日。 朝、学校に来て自分の席がなかったあの日。 そして大好きだった小説を、そっと、学校のゴミ箱に捨てたあの日。 僕の中にどうしようもなく、ネバネバと執拗にまとわりついて、モヤモヤと霞がかった一種の霧のようなものが、確かに生まれては消えゆくのを感じたのだ。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加