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理解、それは悲しい事だった。
自分が特別だと分かってしまった俺は、以前の様にはしゃいで、広い庭を走り回る事が出来なくなった。
以前当たり前のようにしていた事をしなくなれば、している人を羨ましく思ってしまう物だ、この場合無邪気に駆け回るリュウジたちがしている人に当たった。
別にヒトミコ姉さんに止めなさいと言われた訳じゃない、誰に言われた訳じゃないが、何故だか遠慮した俺は少し控えめな性格になってしまった。
……周りはそれを思慮深いと評価しているが。
何がどうであれ、俺は今日14の年を迎えた。
草木が深さを増す初夏の真夜中、12の時を過ぎ日付が変わった今、俺は14歳になった。
「まだ起きてるの?」
開けっ放しになっていたバルコニーへ通じる入り口を、俺より少し背の低いリュウジが通ってきた。
「ああ、ほら、星が綺麗だろう?」
ぴっ、と満天の星空をスライドするように指差した。ほんのりとした月は微笑んでいる。
青白く輝くのもあれば、真っ赤に輝くものも、金に輝くものもある、俺はこれが不思議で不思議でたまらず、また大好きだった。
「いつものことじゃないか」
けらりと笑ったリュウジの言う通り、このムルエトの城は山の上に建っているので、いつでも星が綺麗だ、どの町よりも。
「でも普段より綺麗だね。」
またけらっと笑って、バルコニーの柵に手をついて、こちらを見た。
夜空の様に黒い両の瞳、健康的な肌に黄緑のふわふわしてそうな髪。
明るそうな普通の少年だ、けれどリュウジを甘く見てはいけない。こんな可愛い見た目だが切れ味の良い魔法剣を鮮やかに振るい、ムルエトで五本の指に入る実力者だ。
それでもかわいい、俺の恋人なのだが。
「あ、そうだ。」
ふっと思い出したようにリュウジが、柵に下げていた頭を少し上げた。
数秒、こちらをみて微笑んだ後、ぎゅっと俺に抱きつき囁いた。
「誕生日、おめでとう。」と
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