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「ヒロト、起きなさい。」
朝一番に聞いたのはいつもの通り、姉さんの声だった。
どうも朝が苦手な俺は、恥ずかしながらいつも姉さんに起こされる、そろそろ一人で起きれるようになりたいがだめらしい。
若干唸りながら体を起こすと、外出用の衣装を纏った姉さんが朝日に照らされていた。
おかしいな、今日は俺の誕生日だから国を上げての、いわば「お誕生日会」があるのだが、どこに行くのだろう。
「トゥルエに行くの、彼が――――シロウ・フォン・ド・トルメンタがようやく面会出来るようになったらしいから。」
驚いた、彼が、シロウが保護されて2ヶ月しかたっていない。
というのも、事件の発生は9年前に遡り、舞台はリストの北部、ハクレン。
ハクレンにはとある有名な貴族が一線から退き、ひっそりと暮らしていた。
それがトルメンタ(トルメンタとは吹雪の意味)家だった、そしてその子息がシロウとアツヤ、双子の兄弟だ。そこはちょっと羨ましい、姉さんが嫌という訳ではないが。
父、母、兄、弟。彼らは、静かながらに仲睦まじく暮らしていた――――――たったの五年間だけ。
双子が生まれて五年目、突如として現れた謎の一団(盗賊ではないかと推測されている)にトルメンタ、つまり吹雪家は一夜にして一家壊滅に追い込まれた。
父と母は双子を守るが為にその命を犠牲にした、悲しくも無事に保護されたのは弟のアツヤ・フォン・ド・トルメンタだけだった。
兄のシロウは忽然と姿を消し、ずっと見付からなかった。2ヶ月前までは。
シロウがいたのはトゥルエのスラム街で、視察に訪れたシュウヤ・フォン・ド・フィアンテンス(つまり豪炎寺家)が偶然発見した。
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