月桂樹は流星の下に ―星の芽吹き― 第一章

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俺の四人の親友の内、三人が出ていってしまい、残るはただ一人、レーゼことリュウジだけだ。 彼は必ず城に残り、この日はずっと俺の傍に居るのだが、今日はまだ見かけてない。 何処に居るだろうかと考えながら朝食を済ますと、メイドを押し退けて片付けた。 普段から自分の食器は洗うようにしている、メイドもそれを知っていて普段は一スペース空いているのだがこの日になると俺から食器をひったくろうとするのだ。 「洗わなくていいって言ってるだろう?」 「申し訳ありません…。」 一人のメイドに文句を言ってやると、しょげたように俯いてしまった。 そういえばこのメイドは、最近入ってきた新入りで、トゥルエの出身らしい。 テキパキとよく働くのでレイナ――――――騎士ウルビダのお付きになった筈だが、何かへまを仕出かしたのだろうか。 レイナはまぁ、好き嫌いがはっきりしていて、いわば変わり者(俺が言えないが)なのでよくお付きが変わることは知っているが。 レイナなりに気に入っていたようだが、何があったのだろう。 「やぁ、リュウジ。」 中庭の薔薇園でなにやらこそこそしているリュウジを発見したので声を掛けてみると、多少驚いたように振り向いた。 「ヒロトか、だれかとおもっただろ。」 気配消すなよ、とぶすくれているリュウジが抱きしめたいくらい愛らしかったのだがそこは堪えた。 振り向いたリュウジの手には、一本の群青色の薔薇が握られていた。 ムエラジェム――――――――ムルエトの宝石を意味する薔薇、普通の薔薇と違い鮮やかな赤ではなく、夜空のような深い蒼色の花を咲かせる。 しかも花弁にはガラスのような小さな粒が出来るので、まさにそれは満天の星空、だからムルエトの宝石。 この花は夜にしかその姿を現さない、昼に見るとどうみても雑草だ。 夜になると不思議な事に、葉がしっかりと薔薇の葉になり、背丈も伸び、薔薇に見える。 花が咲いてしまえばその姿はずっと見えるのだが――――――――――大体の人は雑草だと思い花開くまでに摘んでしまう。 「ばれちゃったか、………はい、どうぞ。」 リュウジは悪戯が成功した子供みたいに笑って、それからちょっと恥ずかしそうに手にある薔薇を俺に差し出した。 「…これを、俺に?」 正直、嬉しすぎてどうにかなってしまいそうだ…。 誰かから貰った物より、リュウジから貰った物が一番嬉しいに決まってる。
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