無様な茶番劇

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私が情緒不安定になった後の俺はいつもより更に気性が荒い。 手当り次第に身近な物を殴り、蹴り飛ばす。手の皮膚が傷つき、剥がれても気付いていないようだ。 荒ぶる感情に身を任せて、暴れまわる。 彼女を傷つけると思ったもの全てを壊し、彼女の目に入らないようにするのだ。 しかし傍から見るとその行為は癇癪を起こした小さな子供のようで、まるで手加減が無い。 彼は知らない。 時に見境のなくなった彼自身が彼女を痛めつけていることを。 血走った目で彼女を睨みつけながら、殴る蹴るの暴行を繰り返していることことなど、自我が失われた彼は知らない。 悲鳴を上げながら逃げようと試みるも、彼女の髪の毛は彼によって掴まれていて離れられない。 痛い痛いと連呼する声は完全に怯えていた。 相変わらずの茶番に自分は溜息を吐きながら、背もたれに全体重を掛けて寄りかかった。 いっそのこと彼が彼女を殺してくれたら、気分が良い。 しかしそれは叶わず、いつだってボロボロになった私は助かる。 俺は目移りしやすいからだ。 彼が彼女の髪を手放したとき、彼女は急いで皺だらけのベッドに潜り込む。 あそこだけは俺の手が伸びないからだ。 こうして私はいつだって難を逃れる。 足を組み替えながらまた溜息を吐いた。
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