無様な茶番劇

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攻撃的な俺と、人嫌いの私が生まれた理由はおそらく二つある。 おそらく、とは自分にもまだ分かりきっていないからだ。 だから確定している理由を二つ程、上げてみようと思う。 御恥ずかしいことに、自分は友人関係に恵まれた人間とは言えない。 友好関係を築いても裏切られ、騙されることなどいつものことだった。 いつだったか当時の友人が自分の家に遊びに来たことがあった。 楽しかった。ゲームやお話をしたりして、一日を過ごしていた。 だが自分の知らないところで、友人は勝手に家の中を漁り、家にあったお金を数万ほど気付かれないように服のポケットに入れたのだ。 あの頃自分の家ではお金を取り扱うことが多かったから、どうしても大金が見えないところにいつだって隠されていたのだ。 勿論このことは友人の両親に知られた。 自分の子供が渡した覚えのない大金を手に持っていたのだから当たり前だ。 両親に問い詰められ薄情した友人は、後日両親と共に家に来た。 友人が盗んだ数枚の万札と、お詫びの品を持って。 必死に謝罪する両親の隣で、友人は自分にこういったのだ。 友達だから許してくれるよね、と。 あの時からだろうか、自分の中に人嫌いの私が生まれたのは。 自分は反省の色が薄い友人を、初めて怖いと思った。 そしてなんと汚い存在だろうと感じた。 その後、その友人との関係はそこで終わった。
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