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「・・・それが君の願いなの?」
「そうだ」
「たった一つの願いを、他の人の為に使うと?」
「そうだ」
理解できなかった。
いくら血の繋がった兄弟とはいえ、たった一度きりの願いを自分の為に使わないなんて…
「なぁルーク」
「何だい?」
「お前、前に"僕たちは当人の魂を糧に願いを叶えている"って言ってたよな」
「そうだね」
「だったら尚更だ。
俺の魂と引き換えにグレンの病を治して欲しい」
「それだけの価値がグレンの命にあると?」
僕の質問にライルは答えなかった。
いや
口に出して答えるまでもなく、彼の中で、それはごく当たり前の事として存在していたのだと思う。
「――分かったよ」
「すまねぇな」
僕は「ふぅ」と一つ息を吐くと、ライルの額に手をかざした。
『我、神の名の下に汝が願い、ここに聞き届けん。
その魂を差し出し器とせしめん』
かざした僕の手が淡く輝き、そして、消えた。
それを見届けた後、僕はライルに背を向けて家の出口へと足を向けた。
「確かに君の願い、聞き届けたよ」
「すまねぇ」
「――ライル、僕と出会った日から数えて、ちょうど一ヶ月後だよ」
「あぁ、分かってる」
その答えを背に受けて、今度こそ僕は止まっていた足を動かした。
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