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僕は最後の願いが、その人間の魂の価値を表していると思ってる。
何たって、願いを叶える原動力が魂そのものなのだから。
今回、ライルの願いはグレンの命だった。
それはすなわち、グレンの命が自分の魂を懸けるに値するものだと思っているという事だ。
僕には少し理解出来ないけれど、それでもまぁ、君らしいんじゃないかな。
ねぇ、ライル――
「まさか、願い同様最後の瞬間まで他人の為に動くなんてね」
「ははっ、うるせぇよ」
僕の足元には血だらけのライルがよこたわっている。
毬を追いかけ道に飛び出した少女を庇い馬車に轢かれたのだ。
ライルと初めて会った夜から数えてちょうど一ヶ月後の事だった。
「でもまぁ、君らしいんじゃないかな」
もうすぐライルの命の灯火は消える。
僕はせめて、その最後の瞬間を目に焼き付けておこうと思った。
「なぁルーク」
「何だい?」
「今回、俺のトコに来た"最後の使者"がお前でよかったよ。
・・・これでも感謝してんだぜ」
「!!!!!!!!」
まさか"彼女"と同じ様な事を言われるては思わなかった僕は、少し驚いてしまった。
「――じゃぁな、ルーク」
「・・・またね、ライル」
彼の魂もまた"浄罪宮"にて回収されて、しかる後、輪廻の輪に戻るのだろう。
ねぇ、フィオナ――
他人の為に全てを投げうてる人間もいるんだね。
本当、君が言った通り、まだまだ捨てたものではないのかもしれないよ…
僕の頭上には、いつか天界で見上げた時と同じ様な青空が、この世の果てなど知らないみたいに、どこまでも広がっていた。
Fin
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