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「腑に落ちない顔だな」
「え?」
「無意識か?だとしたら残念だな、随分顔に出ていたぞ」
そうなの?
そんなに顔に出てたなんて…
僕は軽くショックを受けてしまった。
まさか人間に顔色を窺われるなんて、思っても見なかった事だからだ。
口元に手をあてる僕を横目で見ながら、王様は「ふん」と鼻で笑った。
「アルフォンス・ハイヘンベルクは知っているな」
「王様の弟でしょ?知っているよ」
アルフォンス・ハイヘンベルク
目の前にいる王様のたった一人の弟だ。
顔形はとても似ているけれども、性格はまったくと言っていいほど似ていないのだ。
彼は何というか――優しすぎるのだ。
「私が死ねば、王位はアルが継ぐ事になる」
「そうだね」
「アルには王としての素質があると思っている。
兄の欲目を抜きにしても、世情の流れを読む事も外交の術も問題はない。
だが、如何せんアルは・・・」
「――優しすぎる」
「――そうだ。上に立つ者は時として非情にならねばならん。
そうでなければ政は荒れ、その火の粉は民にも降りかかる。
だがあいつは、優しすぎるのだ」
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