001.僕と君。

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「馨、もう終わりにしよう」 「………………うん。」 いきなりの君の言葉で目の前が一瞬真っ白になった。 だけど僕の心は何時にも増して穏やかで冷静だった。 こんな日が来るって、わかっていたからなのかもしれない。 だって僕らは、 「本当にごめん。」 「……僕らが"男同士"だから…なんでしょ?」 どっちも男だから。 今までずっと世間の目を気にしてコソコソと愛を育ててた。 どんなに出来ることが少なくとも確かな幸せがそこにはあった。 でも解ってたんだ。 現実は厳しいことも 幸せが長くは続かないことも 「俺だって本当は……」 「わかってるよ。解ってるんだ。  でも……」 離れたくないっ…… その言葉をぐっと飲み込んで君を見つめる。 「ごめんな。俺が弱いから…」 泣きそうな悔しそうな顔をして俯く君を見ていると心が痛んだ。 「謝んないでよ。僕らは悪いことしてない。」 「でもお前を傷付けた」 「そんなの僕も一緒だ。碧を傷付けて、巻き込んだのは僕だよ」   ……だから、ごめんね。 好きになってしまって。 愛してしまって。 だからせめて最後は 「……笑って?碧、笑ってよ。」 君の笑顔が見たいんだ。 僕は碧の笑顔が1番好きだから。 そう言って、笑顔をみせる僕。 君は驚いた顔をしてるね。 だって、僕も君に見せたかったんだ。 君が「大好きだ」って言ってくれた笑顔を。 「次会う時から、僕らは親友に戻るだけ。なにも変わらないよ」 僕の笑顔と言葉を聞いて君は、小さく息を吐いて僕の大好きな顔で微笑んだんだ。 「そうだよな……何も変わらないよな」 「うん、そうだよ。」 何も怖いことなんてない 恋人から親友に変わっただけで、これからも二人でいられるんだ。 「……ねぇ、碧」 「ん?なんだ?」 これが僕らの幸せなんだろう だから 「世界一愛してたよ。」 「俺も馨を誰よりも愛してた。」 ほら、こんなに心が暖かい。 END.
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