小生の主

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些か、興奮止まぬ小生であるが、小生も、かつてはどのような主に出逢うのかと、心の暗雲は増すばかりであった。今の主と出逢ったのは大雪の候を少しばかり過ぎ、北風が吹き、雪がさんさんと降り積もる時期であった。当時、小生は携帯ショップと呼ばれる奉公先に勤めていた。 其処では、商売繁盛御の字と記された旗印が掲げられ、自動式扉をくぐると、多種多様な同胞達がひしめいており、日頃彼らは自分自身が如何様に素晴らしいかを自慢しあっている。 他の同士が次々と主に巡り合っていく中、未だ主を見つけだすことは出来ていなかった。 焦燥感が次第に積ってゆくばかりであった。
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