二章 2008年 夏

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しかし二、三分で鋼の様子が変わるので再び不安と恐怖が胸中に色濃く渦巻く。 夏の車内なので冷房を強めに設定し、今の車内温度は少し肌寒いほど低い。 にもかかわらず目を閉じたまま助手席に座る鋼は明らかに汗をかいている。 後部座席でも肌寒いと感じるのに助手席にいて暑い訳がない。 それにこの祈りはいつまで続くのだろうか。 「終わったよ。」 心を読んだように鋼が目を開けて溜め息混じりに吐き捨てる。 「疲れたのか?っつーか呪いって疲れるの?」 と聞いてみると 「精神力を使うから疲れる、テレビでよく透視能力者とか予知夢見る連中いるだろ?あいつらも能力使ったらそこそこ疲れる筈。」 という答えが返ってきた。 「どうして他の奴らのことまで分かる?」 この時点では半信半疑だったので直截に質問する。 「あいつらは第六感を働かせるベクトルが違うだけで基本的には同じ、人間の機能として完備されてないものを無理に使うと疲れるのは当然だろ。」 鋼曰わく、こういう能力は周囲から特別視されるが本人が気付いていないだけで潜在能力のある人は多く、とはいうものの俗に言う霊感程度、で留まるらしい。
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