二章 2008年 夏

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涼也は即座に反対車線に移ったが、やはり気分を害したらしく眉間に皺を寄せ 「ナンバーは覚えた。後は陸運局で住所出してもらって空き巣に入るか。」 とらしくない冗談を呟く。 小説の元ネタを知っていたので俺は冗談だと分かったが鋼は 「いや、俺が今からアレを呪うからいいよ。運転手見たか?グラサンかけたいかにもなB系のクズだ。この先で事故るぜアイツ。」 と本気にしていた。言葉の割には笑顔で愉快そうだ。 鋼も俺から見ればホストの様な外見でB系の人と大差ないのだが、鋼本人は威圧的な態度とナルシストが多いという理由でマッチョとB系は親の仇の様に毛嫌いしていた。 人間はどんなに身体を鍛えても獣には勝てない、勝てるとしたら知恵であるのに無闇に身体を鍛えて悦に浸ってる姿がキモいよねー(゚∀゚) と、この前もメールで送られてきた...脈絡なく。 そんな鋼を涼也が制する。 「やめておけ。事故に巻き込まれた人がいたら可哀想だしこの先で事故られたら俺達も渋滞にハマるんだぞ?」 「大丈夫、絶対に事故は一台で呪いは完結させるし一台だけの事故ならそこまで渋滞しないはず…それに」 「?」 「あんなの何匹死んでも世の中何も変わらない、生まれてくる必要も意味もなかった存在だから最後くらい俺の人生の片隅で無様に踊ってもらおうか。」 鋼は相変わらずの笑顔だ。 初めの頃は他を見下し完膚無きまでに卑下するトーク力にドン引きだったがもう慣れた。 涼也はもう止める気もないようだが、鋼が呪う場面を見るのは涼也も初めての筈だった。
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