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学園長室を出て、無駄に広い廊下にでる
「さて、そろそろ隠れるのを止めて出てきたらどうかな?」
石造りの廊下では思いの外音が響きやすく、僕の声は反響した。
僕の視線の先は廊下の角、気配を消してるつもりだろうが甘い。もっとも、あれに気付ける人間は僅かだろうが。
「よくわかったな。気配は消したつもりだったんだが。いつから気づいてたんだ?」
音もなく廊下の角から現れたのは一人の少年。
ゼロの仲間の内、唯一僕が警戒した茶髪の少年だった。
「学園長室に入っていく僕を君が見つけ、咄嗟に隠れたとき。つまり、最初からさ」
それを聞いて彼は苦笑する。
「まじかよ。凄いなアンタ」
先程までは敵だった者に対するものとは思えない軽薄な態度。
疑問に思った僕は彼に問いを投げかける。
「君はあの金髪の娘みたいに僕を敵視しないんだね。どうしてだい?」
その問いに彼は平然と答える。
「敵視?そんなことしないよ。だって」
彼は一度言葉を切り、僕の目を見ながらはっきり言った。
「アンタ、敵じゃないじゃん。アンタが本当に敵で俺らを殺す気だったら、ゼロもミーシャもとっくに死んでる」
面白い。
思わず口角がつり上がるのを感じる。
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