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「君がそう思う根拠は?」
込み上げる笑いを抑えつつも彼に問う。
「ゼロは抑制具を付け、学生の擬態をした状態で死神と戦ったことによって消耗していたし、ミーシャは学生としては強いが戦士としては戦力外だ。」
ミーシャとは多分ツンデレ(仮)のことだろう。
状況を客観的に見極める。
口でいうのは簡単だがなかなか出来ることではない。
少なくとも、学生程度では仲間を「戦力外」と言いきれるほど私情を捨てきれない。
彼から感じる力はゼロよりは小さい。
でも、ゼロより彼の方が断然面白い。
こらえきれず口から笑いがこぼれ落ちる。
「……シアン=フレイル」
「え?」
「僕の名前さ。シアンと呼んでくれ。君の名は?」
面白いと感じた奴には自分から名を名乗る。
僕の数少ない流儀の一つだ。
「ライル=ロゼットだ。」
ライルか……憶えておこう。
「ところでシアン。俺からも一つ聞いてもいいか?」
ライルがおずおずと尋ねてくる。
ふむ……さっきから僕が質問してばかりだったし、今度は僕が答えてもいいだろう。
「ああ、いいよ。なんだい?」
「シアンはもうゼロを殺す気はないんだろ?だったらどうしてまだ学園、しかも学園長室なんかにいるんだ?」 なるほど……もっともな疑問だ。ライルからしたらとても不思議なことだろう。
つかの間考えた後、答える。
「悪いけど、それは秘密さ」
そう、今知る必要はない。明日になれば嫌でも知ることになるのだから。
わざわざネタバレをする必要はないだろう?
「じゃあライル。また今度。転移」
一方的に別れを告げ、本日三回目の転移をする。
久しぶりに、楽しい任務になりそうだ。
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