第零章

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 時雨の降り注ぐ荒野に、僕は佇んでいる。  僕の目の前には、地に倒れ伏す一人の少年。  彼の四肢は切断され、大きく裂かれた胸からは血が止むことなく流れている。彼の命が風前の灯火であることは火を見るより明らかだ。 「畜生……なんで…………俺が……こんな目に?俺は……世界最強で…………チートな……転生者…………だぞ?」  息も絶え絶えに少年は呟く。その声には、まるで信じられないものでも見たかのような驚きが詰まっていた。 「うん、そのとおりさ。君はこの世界で最強だ。この世界の神は君にそれだけの力を与えた。だが生憎と、僕はこの世界の人間じゃない。ただそれだけのことさ。」 「な……?それじゃあ…………お前は……いったい?」 「シアン=フレイル。数多に存在する世界の調和を保つ、冥界の一員さ」 「めい…………か……い?」 「そう、君はやり過ぎたんだよ。世界の調和を乱すほどにね。…………じゃあ、さよなら。」  僕は手にしていた大鎌で彼の首をはねる。彼の首は血のアーチを作りながら飛翔し、重力に引かれて地に落ちる。 「任務完了っと。観たいアニメもあるし、早く冥界に帰ろう。」
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