焦燥

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"パタン" というよりは、もう少し強めに、掌に感情(この感情は言わば不快感に近いもの)による力みを加えつつの、"パタン"に近い音と共に本が「締め出され」た。 本が心臓を持ち、呼吸のできる生物であったとしたら、苦痛に歪めながら発せられる「痛い」をしていただろう。「痛い」をさせた自分は、この本が嫌いである。 この本は僅か1ヶ月前に、我が教和大学の昨年の卒業生により執筆された論文を"厚め"、出版された異物である。 何故異物か、それはたった今、ちょうど半周の地点まで読み終わった或る生徒の論文により普遍的な論文集から歪められ、さらには無茶苦茶で支離滅裂で有耶無耶な物として化けさせられた異物だからだ。 この少年の「焦燥」論たる物は、私の「焦燥」に焦燥を与えた。 不快である。
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