1987年5月 雨とネオンとトライアングル

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 雨の歓楽街。まばゆいネオンが煌めく眠らない街、新宿歌舞伎町を少女はアテもなくさ迷っていた。  おなか、すいた。住むところを、失った。  ほんの少しの着替えが入っただけのバッグを1つ。けれど、財布は空っぽ。  目に映り込むネオンの光は雨に濡れた路面に反射し輝いていた。  虚飾の灯りは、冷たく生気を感じない。夜のこの街を、傘も差さずに歩く少女の姿は異常だったが、彼女に声を掛ける者はいなかった。
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