始まり

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世界は往々にして理不尽なものである。 それに気づくか気づかないかはその人の生き方次第。 目を背け、背を向けて、自分の良いように解釈し続ける。それが出来る人は恐らくいつも明るく、溌剌とした人生を謳歌するのだろう。 しかし、そんな人間ばかりでないのがこの世界である。前向きで、皆が明日に目標を見出して生きているならば、そんな世界は恐ろしく気味が悪い。 世界はバランス。正があれば負があって、勝ちがあれば負けがあって、光があれば闇がある。 そうやって、世界は真ん中という基準を作っているから個人によって差ができ、様々な性格の人間が生まれてくるのだろう。 そう俺は考える。 この自論に反論を返したくなる人もいるだろうが、それは取り敢えず置いておき、最初の話に戻る。 世界は往々にして理不尽。これはつまり、時として自分が望む望まないに関わらずそのバランス――いわば世界の帳尻合わせに付き合わされた事を悟る、ということなのだと俺は先の自論をきっかけに思うようになった。 それが落し物をした時の事なのか、厄介な事件に巻き込まれた時の事なのかは、まぁその人の感覚の問題なのだろうけど、とにかく、これはそういうお話である。 世界なんて言うスケールのでかいものに全てを押し付ける訳ではないけれど、始まりは何とも理不尽極まりない事だったということだけは声を大にして言っておく。 ―――――――――――――― 黒田市。そこが俺の生活している土地の名称だった。 市の中心部には都心顔負けのビル群が立ち並び、娯楽施設も多く存在する一方、少しでも郊外に足を運ぶとアスファルトが田畑に変化し、ビルの代わりに多くの木々などの自然が顔を見せる少し変わった都市である。 中心部を囲うように大自然が原生していることから、近年日本の新しい都市像として"革新都市"と呼ばれている事もあるが、住んでいる身としては土地の人間としての慣れがあるからか、そんな大仰な文句に何とも腑に落ちないといった感情を抱いていた。 しかし、客観的な立場として外部の人間の意見のほうが事実を明確に捉えているのだろうと思わなくもない。実際、この都市は他地域からの転居者が後を絶たない状況らしい。 そんなもっともらしい状況を見ては、嫌でも納得できるのが人間の性質だと俺は思う。 因みに、俺は今現在十七歳の高校生。今も授業終わりに自転車で帰路についている最中だ。
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