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そう言って靴を脱ぎ、玄関でそろえてから長い廊下を歩いて自分の部屋に向かう。
部屋に着くとカバンを机の上に放り投げ、ベッドに身を投げる。
そのまま深く息を吐き、学ランのポケットにある携帯を取り出して時間を確認する。
今は夕方の四時ちょうど。
じじいの稽古はともかく少し休むことにしよう。
最近は忙しかったからか少々寝不足だ。
何年かぶりに昼寝としゃれ込むのも悪くない。
ゆっくりとそのままの体制で目を閉じる。
だんだんと暗くなっていく部屋を見ながら、どことなく言いようのない不安が胸に渦巻く。
目が覚めたら、この景色が見えなくなってしまいそうで。
所詮、俺の勝手な空想だ。
ただでさえ刺激の少ない日常。
少しぐらい非日常を夢見たって、罰は当たりやしない。
自分の中でそう踏ん切りをつけると、自然と瞼が重くなっていく。
俺はそのままゆっくりと意識を手放していく。
それが俺の人生を変える理不尽の始まりだとも知らずに。
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