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台所にある冷蔵庫から麦茶の入っている容器を取りだし、それをそのままらっぱ飲みする。
季節は夏上旬。冷たい麦茶が一番合う季節のはずだが......
「今日は冷えるな......」
今夜は何時もとは違い、学ランのままでも寒気を覚えるほどの妙な空気を感じた。
直ぐに麦茶を冷蔵庫にしまい、代わりに冷蔵庫に入れてある魚肉ソーセージを一本無造作に取りだしてビニールをはぎ始める。
それをまた無造作に頬張りながら居間を後にしようとすると、ふと廊下から生温い風が俺の頬を吹き付けた。
何とも気持ち悪い空気だ。
そんな空気に心の中で悪態を吐きながら、何気なく部屋の片隅に備え付けられているエアコンに目をやった。
そこに変化はない。電源が入っていることを知らせるランプも光っていることはなく、そもそもエアコン用に高い場所にあるコンセントのプラグには何もささってはいなかった。
「......気のせいか」
そんな言葉とは裏腹に、俺の身体はその不気味な雰囲気に何時しか小刻みに震え始めていた。
「畜生......何で震えてんだ? 俺」
今度ははっきりと悪態を口にしながら、俺は震えだした身体を止めようと両腕を抱え込んだ。
しかし、俺の身体の震えは止まらない。まるで寒さに震える子犬のように、ブルブルと震え続ける。
......おかしい。
包まれる闇の中で俺は思考する。ついに俺はありもしないものを、そこにあると言ってしまうような馬鹿になってしまったのか......
違う。しっかりと自分の事は認識しているはずだ。例え、それが自分にとって不都合な事に目を背け、認めようとしない脆弱な自分だとしても、その事実をしっかり受け止められている自覚がある内は自分を見失ってはいないはず。
俺は何処までも正常。そのはずだ。
その間も身体の隅々が拒絶を訴え震え出す。震える足を無理やり一歩前へ。とにかくまずは行動だと自分に言い聞かせ、歩き始めようとした、その瞬間だった。
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