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「ごめん。ちょっと、考え事をしてたんです」
ゆっくりと上半身を起こしながら、Q太郎の問に答える。
「へぇ、なんか珍しいですね。松田さんが考え込むなんて」
テーブルを挟んで向こう側に座るQ太郎と、向かい合うように胡座をかいて座る。
「そう、かな?」
「えぇ、仕事関係は別ですけど。いつも飄々としてるように見えるから」
確かに。プライベートで思い悩む事なんて、ここ最近無かったなぁ。
「何か悩み事でもあるんですか?」
グイッと身体を前のめりにして、真剣な顔つきでQ太郎が問いかけてきたから。
「……えぇ、実は」
相当恥ずかしいけど。
誰かの意見も聞かないと、埒が開かない気がして。
「鈴木さん、」
「はい、何です?」
「鈴木さんって今、恋してる?」
言った瞬間、後悔した。
だって、Q太郎の顔が余りに間抜け面で。
呆気にとられてるのが、丸わかりだ。
恥ずかしさから、俺は顔を俯かせる。
ああ、言わなきゃ良かった。こんな事。
けど、Q太郎は――
「してますよ!」
その言葉に、勢い良く顔を上げた。
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