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「……自分、開けるん遅いわ」
ニコリともせず、そう一言呟くと。
「わっ…!」
一歩、玄関先に足を踏み入れて、扉が閉じるのと同時に僕を、抱き締めた。
いや。抱きついた、の方が正しいかも知れない。
「後藤くん?」
「……」
彼は何も言わないまま、刻々と時間が過ぎた。
「どうしたの?何か、あった?」
「…………別に、何もない」
やっと、声が聞けた。
けれど、その声は酷く震えてる。
「どうみても、何かあったようにしか見えないけど」
「……疲れただけ、です」
「そう、最近忙しそうだったもんね」
そっと、背中をさする。
彼はそっと顔を上げ、僕の目を見た。
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