33人が本棚に入れています
本棚に追加
「村上っ!」
突然耳に飛び込んだ、舌っ足らずな声。
バッと顔を上げると、そこには同じようにびしょ濡れなコカドさん。
「…………来て、くれた」
「なにしてねん、お前!!」
いつもの、無表情には似つかわしくない怒気を含んだ声色、少し切れた息。
走って、来てくれたのか、な。
「何って、コカドさんを待ってたんですよ」
「あれから何時間経ってる思てんねん!……こんなビショビショなって」
「自分だって」
コカドさんは、そっと。本当にそーっと、俺の頬を撫でた。
嬉しくて涙が出そうだ。
「……あのね、コカドさん」
「なんや」
「例えコカドさんが坪倉さんを好きでも、」
「え…、?」
「俺は、コカドさんが、好きです」
真っ直ぐ、射抜くように彼の瞳を見つめる。
コカドさんは大きく目を見開いて、息を呑んだのが分かった。
・
最初のコメントを投稿しよう!