赤劇シャッフル劇場2

5/9
前へ
/111ページ
次へ
「村上っ!」 突然耳に飛び込んだ、舌っ足らずな声。 バッと顔を上げると、そこには同じようにびしょ濡れなコカドさん。 「…………来て、くれた」 「なにしてねん、お前!!」 いつもの、無表情には似つかわしくない怒気を含んだ声色、少し切れた息。 走って、来てくれたのか、な。 「何って、コカドさんを待ってたんですよ」 「あれから何時間経ってる思てんねん!……こんなビショビショなって」 「自分だって」 コカドさんは、そっと。本当にそーっと、俺の頬を撫でた。 嬉しくて涙が出そうだ。 「……あのね、コカドさん」 「なんや」 「例えコカドさんが坪倉さんを好きでも、」 「え…、?」 「俺は、コカドさんが、好きです」 真っ直ぐ、射抜くように彼の瞳を見つめる。 コカドさんは大きく目を見開いて、息を呑んだのが分かった。 ・
/111ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加