赤劇シャッフル劇場2

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コカドさんが、誰を見ていたのかなんて、本当はとうの昔から知っている。 だって愛している人の事、俺だってずっと見てた。 「村上…」 「コカドさん、振られたんでしょ?金田に聞いた」 黙ったまま、俺から目を離さないコカドさん。 「あのふたり、付き合い始めたって」 「……」 「だから、言うなら今日しかないって思ったの」 「坪倉さんの代わりでいいから、俺と付き合って下さい」 瞬間。冷え切った身体にほんの少し、熱が伝わった。 「……アホ。ほんまアホやな、お前」 「アホでもいいよ。付き合って、コカドさん」 「代わりなんて、そんな悲しい事言うな」 俺の背中に回る腕の力が、少し強くなる。 「代わりがいいんだ。坪倉さんみたく愛されたいから」 「…………もう、なんも喋んな」 チラリと盗み見たコカドさんの頬には、雨の粒。 「泣いてるの?」 「……ちゃう、雨や」 「……そう」 神様、お願いです。 もう少し、ほんの少しでいいから。 弱虫な俺たちの涙を隠す為に。 【雨よ止まないで】 貴方は、小さな小さな声で呟いた。 「ごめんな」 俺は、ただ。素知らぬフリでコカドさんの腕の中にいた。 end 選択肢お題 より ・
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