3分でクッキング

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「そうなんですかー」 「そうなんですよー。はーい、次でーす。湯せんでチョコを溶かしていくんですが、このときお湯の温度は50度くらいにしてください。あまり高いと、これまた良くありませんので」 「…………」 「いわゆるテンパリングですねー、温度は英語で言うとテンプラチャーなので、まあそんな感じのテンパリングでーす」 「天ぷら……?」 「はいそれ無関係でーす。こうしてチョコを混ぜるときには、空気が入らないようにしてくださいね、水分も空気も苦手なデリケート極まる存在。それがチョコレートでーす。そう、牛乳なんかを混ぜるのもダメですから、気をつけてくださーい」 「…………」 「さあ、ここで難所に入りますよ。チョコの温度を、31度くらいにして練るのです。この温度がポイントですので、温度計を駆使して頑張りましょう。上手く温度をコントロールしてください。この工程によって、チョコの口当たりがぐっとなめらかになり、さらには完成したときの見栄えにも関わりますからねー」 「…………」 「さっきから静かですけど大丈夫ですかー? はい、次は28度にして練っていきまーす。この二度手間こそが、さらなる高みへとチョコレートをいざなうのでーす」 「あっそ……もう出来た?」 「はい、これで型に移して固めれば完成でーす。さて、いかがだったでしょうか? さっき君が僕にくれたとんでもなく残念で悲しいバレンタインチョコとは比較にならないくらいちゃんとしてるでしょ?」 彼は、彼女にボウルの中の美しい光沢を放つチョコレートを見せながら、爽やかに微笑んだ。 「…………」 「さあ! それじゃ今見た通りに作り直してよ! バレンタインチョコレート!」 「に……に……」 「ん? なに、どうしたの?」 「二度と作るかぁー!!!」 彼女は怒りとともにボウルのチョコレートをぶちまけた。
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