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脱兎の如く屯所の住居部へと入って行く原田隊長の背中。
どうしたら良いのか迷っていると、総司さんのため息が聞こえた。
「中は大丈夫なんでしょうね?」
「分からない」
ペリペリと紙を取った斎藤隊長は不安そうに低く答えた。
「俺にも教えてくれたら上手くやれたのに」
「平助も驚かすつもりでいたんです。
違う意味で驚かしましたが」
肩を落とす総司さんに、私は恐る恐る聞いてみた。
「…新撰組の行事か何かでしょうか?」
斎藤隊長も仮装なのかな、紙吹雪仮面って格好良い名前が付けられていたし。
まだまだ新撰組の知らない一面があるのかもしれない。
斎藤隊長へと羨望の眼差しを送る。
そんな私に、斎藤隊長は目を大きく見開いた。
「…奇跡だ、勘づいていないぞ」
「ええ、中が大丈夫ならば希望はあります」
「なんか俺もワクワクしてきた!
よし、皆、乗り込もう」
平助さんが目をキラキラさせて足を進めた。
皆の明るい発言に意味を分かっていなくても頷き、平助さんの後を追いかける。
草履を脱ぎ、中に入ったが静かな玄関に静な廊下。
この時間帯なら誰かしら廊下を歩いていても良いはずなのに…。
やっぱり何か行事か集会でもあるのかな。
平助さんを先頭に、大広間の方向へと進んだ。
ヒソヒソと小声で何かを話した総司さんと斎藤隊長に目をやると、「ヒマリ君」と声がかかった。
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