きっと素敵なことが始まったんだって

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「お帰りなさい」 ふわっと、日溜まりのように微笑む総司さん。 お帰り?って、さっきも入った時に言ったと思う。 疑問が頭に浮かぶが、総司さんの笑顔に惹かれていると…。 「「松田ヒマリお帰りなさい!」」 突然大広間の襖が両方開き、建物を揺らす程の大きな声が響いた。 「え!?」 キーンとする耳を庇いながら、その場の光景にハッと息を飲む。 大広間の掛け軸が、『お帰り松田ヒマリ』の横断幕に。 所処に花が飾ってあり、折り紙で飾り付けもしてある。 机に並ぶのは、大きなおにぎり、煮付けに天婦羅、カステラ等のご馳走。 何よりも私に向けられる皆の笑顔。 そして、長かった髪の者も、私と同じようにそれぞれ短くなっていた。 「驚いたかい? 皆で松田君に感謝をしたくて、再会の喜びを分かち合いたくて、協力して用意したんだ」 中心にいた近藤局長が、大きな口を開けて笑う。 「こんなに纏まったのは久し振りだぜ。 短時間でこれだけのことがやれるなら、普段どれだけサボってんだか…」 してやったりと余裕に笑う土方副長も、黒くしなやかな髪を短くしていた。 「こいつら、何も言ってないのに切ってるんだぜ」 「そうそう、皆して格好つけやがって」 艶やかに微笑む永倉隊長と隣で満足そうに頷く原田隊長。 「凄いよね、そのカステラ、永倉君が作ったんだよ。 皆で一緒に食べよう」 無条件で優しい笑顔の源さん。 「……っ」 心臓が高鳴り、涙が溢れて、思わず両手で口を塞いだ。 .
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