きっと素敵なことが始まったんだって

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涙が溢れた視界に、皆の笑顔。 良かった…。 帰って来て良かったんだと、心の中で恐れていたことが涙と一緒に崩れる。 「また明日から鍛えましょう。 貴女が何者だろうと遠慮なくしごきますよ」 「ああ」 総司さんがいかにも楽しみのように言う。 斎藤隊長も、ごく自然に同意する。 「ヒマリの髪、また伸ばしてよ。 短くても良いけど、長くても良いから」 「然り気無く口説いてんちゃうか。 松田、気ぃつけや」 ニヤっとした山崎さんが、はにかんだ平助さんにヤジを入れる。 平助さんから貰った髪結い紐をじいに預けたままだった。 「松田、気にすんなよ」 「女扱いしなくてごめんな」 「つーか、女だって分からなかったからだろ」 「だけど、前と同じようにするからな」 「俺は百合でも構わないぞ」 たくさんの声が…お日様のように降り注ぐ。 一つ一つが、乾いた土に染み込む雨のように胸に響く。 「み…皆さん…あ、あり…」 嬉しさのあまり震えて声にならない。 嗚咽にならないようにしたいのに…。 私の肩に、総司さんの手が触れた。 「泣き虫ですね、新撰組のお節介隊長は」 「ほら、ちゃんと言える?」 背中を平助さんが軽く叩く。 「は…はい…」 ぐしっと、手の甲で涙を擦る。 「皆さん…ありがとうございます。 それから…ただいま…!」 受け入れられるような大きな拍手に、私は泣きながら笑った。 ありがとう。 .
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