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さく、と気持ちの良い軽い音を立てる足元。
ひらり、と真新しい紅葉が落ち、少しくすんだ紅葉に被さる。
銀杏の葉は今にもどっさり落ちそう。
細い枝も気にせず焦げ茶色のリスが、二匹で絡まりながら走っている。
「ヒマリ君」
透明感のある総司さんの声。
秋の乾いた風に乗って、私の背中に届いた。
「足跡がこちらに続いていました」
振り向きながら、下へと指をさす。
「過去形なのは…」
次は太いブナの木の上へと指をさす。
「マルヒ発見しました」
幹と枝の間に追っていた犯人が隠れてしがみついていた。
ぎょっとした顔を見せたスリの犯人が、
さらに上へと登ろうとする。
登っても辿り着くのは空なのに。
「投降して下さーい」
手を口の横に当てて大きな声で促す。
「俺は絶対に降りねえ!」
「なんだありゃ…猿の真似か?」
「…熊かも」
総司さんの後に続いて木村さんと塚本さんも木の上部へと仰ぐ。
熊との発言に、申し訳ないけど笑ってしまう。
塚本さん目線だと痩せているあの人も熊に見えるのかな。
「早く降りないと危険ですよー!
降りて下さい!」
再度促すが、降りる気配は無い。
本当に危ないから、何度かお願いしてみる。
「志村君」
「了解っす!」
迷いもない総司さんの声に、志村さんの声が弾む。
その志村さんの肩には、擲弾筒が構えられていた。
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