第2部 不自由を常と思えば不足なし

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日常という状態に戻ってから、二ヶ月が経過する。 沖田隊に復帰し、巡察も警らも捕物も、同じようにさせて貰っている。 女だと知られ、最初は気を遣われていたけど…有り難いことに長続きせず。 これも総司さんが手加減無用で鍛えてくれているおかげかな。 久米部さん達も変わらず接してくれる。 けど…。 「ほな、後はうちらでやりますんで、先に隊長と松田は帰っていて下さい。 んなことで、松田、報告書頼むで」 何故か、総司さんと二人で行動させられることが増えた。 前も二人で組むことはあったけど、何かと「松田は隊長と」とか、「隊長の後ろは松田が」とか…。 私が危なっかしいから、弱いからならば納得するが、ニヤニヤされながら言われるので故意を感じる。 いじめ?いやいや、総司さんと組むことは苛めじゃない。 女だから?ならば目の前で久米部さんや志村さんや塚本さんが立ちションしたりしない。 「行きましょうか」 総司さんは不思議に思わないのか、眉ひとつ変えない。 深く考え過ぎかな。 返事をして後を追いかけると、サクサクと軽快な心地好い音が響いた。 紅葉をひとつ持って帰って栞にしようかな。 永倉隊長に借りている本を思い浮かべながら、赤く綺麗な紅葉を手に取った。 「…紅葉饅頭が食べたいですね」 総司さんが横目でそれを見ていたらしく、心の声を惜しげなく表現した。 .
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