第2部 不自由を常と思えば不足なし

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「帰りにお店には寄りませんからね」 総司さんならあり得る事態に、釘をさしておく。 「はいはい」 あ、今のは聞かなかったことにするつもりだ。 頬を膨らませた私に、総司さんが怪しく微笑んだ。 「帰りには寄りませんよ。 明日行きましょう、今日も頑張ったご褒美にご馳走しますよ」 「…いえ、大丈夫です」 本当ならば嬉しい言葉に、思わず表情が雲ってしまったのを見逃すはずもなく、総司さんが首を傾げて立ち止まった。 「どうしました?」 綺麗な瞳に私が写る。 それは…。 総司さんにこれ以上の負担を掛けたくないから、と言う言葉を飲み込む。 隊長への言葉として不適切かなと思ったからだ。 「着物のことを気にしているんですか?」 すんなりと的中され、思わず顔を上げてしまった。 馬鹿ですねと、目を優しく細められる。 前に女物の着物を買うことになり、総司さんと千春のお店で選んだ時のこと。 平助さんが出すことになったが申し訳なくて、落ち着いた藍色の一着だけ自分で買おうとした。 しかし、支払いの時に千春は私のお金を受け取らなかった。 沖田さんからお先に貰っています、と。 そして、一つしか選ばないだろうと思ったと、総司さんが先にもう一つ薄い橙色の着物を用意していた。 帯は面子もあるだろうし平助に出して貰いましたから、と金糸が混じった灰色のもの。 あれこれと言いくるめられ、結局私が支払うことは出来なかった。 .
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