第2部 不自由を常と思えば不足なし

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総司さんに比べれば給金も少ないし、新撰組に入隊した時はほぼ無一文。 貯蓄はなるべくしているつもりだけど、支給されない装備品などの諸々の用意もある。 頼りなく思われているんだろうな。 べしっと後頭部を叩かれる。 「うっ!」 前のめりになりそうになり、耐えながら総司さんを涙目で見上げた。 「気にするなら返品しましょうか」 「い、嫌です! 総司さんがくれた素敵な着物を手放したくありません。 あれは大切な品です!」 総司さんのお金が戻ってくるならとは思うけど、それは悲しいこと。 贈ってくれた総司さんへの感謝も、自分の嬉しい気持ちを大切にしたい。 「それならば気に病むのは不必要です。 私も…贈ったかいがありました」 私の泣き付くような言葉を満足そうに小春日和の温かさで微笑む。 とくん、と胸が鳴った。 どうして、そんなに優しくしてくれるのですか? 総司さんを慕う他の有能な隊士もいるのに、私に目をかけてくれる理由は何ですか? 蕩けるような甘い笑みを向けてくれるのですか? 「恩を売っておけば馬車馬の如く、私のパシリになってもらえますからね」 ……。 …さっき思ったことは取り消しておこうかな。 .
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