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東山の山林から町に戻る。
神社の境内から子供達の楽しそうな声が聞こえた。
「山南さんが寺子屋を開くそうですよ」
総司さんが声の方に顔を向けてから、穏やかな声で教えてくれた。
「山南副長が…」
「副長ではなくなりましたけどね」
切ないような私の言葉にクスっと笑うので、総司さんは新撰組を抜けることに反対ではないのだろう。
刀が握れなくなって、代わりにペンを握る。
無邪気な子供達に、知ることを学ばせる。
山南副…じゃなくて、山南さんの落ち着いた感じに合っていると思う。
本来なら法度を破った罰則で切腹しなければならなかったが、父の口利きで山南さんは切腹せずに済んだ。
腹を切らせて死ぬ身なら自分が山南の命を貰っても良いだろうと、父は形ばかりだが山南さんを引き取った。
東山にある父の知人邸宅に身を寄せているとの話だから、もしかしたらバッタリ会うかも知れない。
「山南さんの寺子屋なら子供達が喜んで集うでしょう。
私も子供が出来たら預けたいですよ」
未来を見つめるように空を仰ぐ総司さんの横顔に、目を奪われる。
優しい顔。
総司さんも子供が出来たら…。
「え?」
「はい?」
子供と言いましたよね!?
総司さんに!?
「い、いらっしゃるんですか!?
伴侶となる方が!?」
いつの間に…。
おめでたいことだけど、心が落ち着かない。
総司さんが隠していた…と言うか気づけなかった自分にかな?
喉がつっかえるような、苦しさも感じる。
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