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動揺が声に出ていたのか、途中で裏返ってしまった声。
初めは何事かと驚いた総司さんは、一度口元で笑うと止めていた足を進め始めた。
てっきり答えてくれるのではと思っていたため、一歩遅れて後を追う。
変なこと聞いちゃったかな。
今は総司さんの後ろ姿しか見えていないけど、綺麗だと素直に思う。
伴侶になるような女の人がいても驚くようなことでは無い。
それなのに…。
「伴侶になる予定の者はいませんが、心に決めている者はいます」
総司さんの柔らかい声が穏やかな秋の日に調和する。
誰なんだろう、総司さんにこんな優しい声をさせる人は。
「きっと…素敵な方なんでしょうね」
ふと心に浮かんだことを口にすると、総司さんはクスクスと笑いだした。
「素敵も何も、泣き虫でお節介で、自分のことに無頓着で、無鉄砲で、嘘もつけないような馬鹿な娘ですよ」
「そ、そんな方が総司さんのお好みなんですか…」
ちょっと想像できない。
総司さんにそっと寄り添う健気な性格で、花魁のような艶やかで綺麗な人を想像していたから。
だけど、総司さんが一人で外に出ているところはなかなか見たことがない。
遠い所に住んでいるのかな、それとも道ならぬ恋…。
余りにも稔麿や高杉達にも鈍い鈍いと言われていたので、恋のいろはを学ぼうと、永倉隊長に借りた本。
それに夫と奉公人との間で揺れ動く恋心を描いているものもあった。
総司さんも、まさか…。
「たぶん、今考えていることは大外れですよ」
総司さんが私の顔も見ずに断言した。
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