第2部 不自由を常と思えば不足なし

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「…おい、黙って入って見下ろしているんじゃねえよ。 てめえは礼儀も知らねえガキか」 「ああ、すみません。 土方さんの頭頂部を見ていました。 ハゲないかなって」 無言で土方さんの部屋に入り、机の前に難しい顔で鎮座する土方さんを見下して…見下ろしていると、痺れを切らしたようで噛みつかれました。 「ハゲてねえよ、アホが!」 「違いますよ、お願いごとです。 どうかハゲて下さいって」 「そっちの方が質が悪い! 俺はハゲの家系じゃねえからハゲない!」 おや、そう言いながらも頭を触っているではないですか。 もう三十路ですもんね、机に向かう時間が長いと身体も折り返し地点ですかね。 「俺は来年三十で、今はまだ二十代だ。 皆して三十路扱いしやがって」 「聞こえてましたか。 誰も土方さんを年寄り扱いしていませんよ。 若いなぁと感心さえしています」 既に仕事なんて手も付けずに、土方さんがほう?と顎を上げる。 ふふ、これで今日も仕事が遅延します。 私から売られた喧嘩は、何だかんだと言いながら買ってしまう性分。 試衛館時代から負けず嫌いは変わっていませんね。 しばらく徹夜するが良いでしょう。 「随分と食いかかるな、え? 発散する場所がなくて俺に八つ当たりか?」 ほら、大人げない。 .
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