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八つ当たり、とは大層な。
「若いですよ、土方さんは」
にっこり笑う私に土方さんは卓上の枡形の灰置きあった煙管を持つと煙草に火をつけた。
また直ぐ吸うんですから。
この前近藤さんに言われて、健康の為に禁煙するとか、つい先日もほざいていたのを忘れたに違いありません。
年寄りだから。
細く煙を吐いた後、土方さんが誘惑するかのように皮肉な笑みを向けた。
「で、今日は何をしてくれたんだ?
志村辺りが重火器でもぶっ放したか?」
当たりです。
土方さんは先見の明がありますね。
とは誉めずに笑みを保つ。
「ったく、しょうがねえな。
始末書をヒマリに書かせるから、ここに呼べ」
土方さんはそう言うと、先程つけたばかりの煙草を灰の中へ惜しげもなく捨てました。
ヒマリ君に煙たい思いをさせられないと、嫌でも分かります。
だったら煙草を止めればいいのに。
「ヒマリ君と二人きりになったら、いやらしいことをしないで下さいね」
「ば、馬鹿野郎!
いやらしいことなんてするわけがないだろ!」
土方さん、唾を飛ばさないで下さい。
そして一瞬疚しい気持ちを落ち着かせ誤魔化して目を泳がせないで下さい。
「ヒマリ君との子供が欲しいとの話ですが…」
「こ…!
そりゃあ、欲しいだろうが…」
ぶすっとした顔の中に、照れた態度。
土方さんも変わりました。
ヒマリ君を想う気持ちは負けないとばかりに、受けて立つように、自分の恋心を隠さない。
ヒマリ君には無理強いはしていないのは、大人対応と言うべきか、逃げ腰と言うべきか。
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