第2部 不自由を常と思えば不足なし

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「子供うんぬんの前に、手さえ繋げねえ。 ヒマリも落ち着いて来たようだが、まだふとした拍子でも触れると…泣きそうになる時もある」 「私にはそうではありませんけど」 「くそっ、自慢か? お前の場合は単に男として意識されていないだけだろ。 地獄の特訓で鍛えてくれる隊長さんよ」 土方さん、それは負け惜しみか捨て台詞ですか? 少しイラっとしましたが、土方さんがいない時に句集を皆の前で朗読することで許してあげます。 でも、土方さんもズバリと言いますね。 男として意識されていない…ですか。 よくヒマリ君は土方さんと楽しそうに話を弾ませている。 土方さんを切なそうな目で追うこともあります。 私も見てくれているようで、そのことは素直に嬉しい。 昼間に真っ赤になっていましたが、逆にやられたのは私の方。 思い出すだけでも頬が赤くなる。 「それで、高杉との子供はいないんで大丈夫ですね?」 「…急に話を変えやがって。 ああ、松本の話だと心配ないらしい」 はぁと、自分でも驚くほど肩の力が抜けるため息をしてしまいました。 土方さんはそれを見てニヤリと含み笑いをする。 「安心したか?」 「それはそうですよ。 高杉か吉田か、どちらかと血が繋がっている子供を愛せるか心配でしたからね」 「おい、勝手に父親ぶるんじゃねえよ」 そんなこと言いながら、土方さんだって覚悟をどこかでしていたくせに。 ヒマリ君を愛するからこそ、何があっても否定をせずに受け入れようと。 あり得ない最悪の事態を想定するのは、職業病ですね。 .
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