第2部 不自由を常と思えば不足なし

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土方さんが短くなった髪をガシガシと掻いた。 「あの時、ヒマリの操が奪われたと知った時」 ヒマリ君がいないところでも、なるべく触れなかった話題。 触れられなかった…と言うべきですね。 互いの感情も、ヒマリ君への同情も、聞きたくなくて。 二月たって、やっと、そっと触れる話。 私は静かに土方さんの言葉を聞いた。 「悔しさも怒りも、全てが混沌としていて、何よりあいつが可哀想だと思った。 だが冷静になると…あいつの中に初めて入った男が俺では無いことを可哀想だと思っていた自分がいた。 あいつが無理矢理であっても、誰かの手で感じさせられたことにも腹を立てていた」 土方さんが眉を寄せる。 自分が情けないと感じているのでょう。 ヒマリ君に想いを寄せる男なら、彼女の初めての男になりたいとは誰しもが望むこと。 彼女の自分にしか見せない顔を見てみたいと思うのも性でしょう。 「俺はちっとも、あいつのことを考えてやれなかったと反省するぜ」 拳を自分の大腿に打ち付け苦々しい顔をする土方さんに、言うべき答えはありません。 土方さんはもう、反省すべき答えを持っているから。 「クズ野郎と何時でも罵って差し上げたのに」 「ふっ、総司さまに頼む位なら滝にでも打たれて精進するぜ」 自分を責めて欲しかった、自分を戒めたかった。 一人懺悔に耐えて、土方さんは乗り越えた。 やはり、強い人ですよ。 .
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