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▽▽▽
柄にもなく、総司にあんなこと言っちまった。
あいつなら黙って分かってくれると思った。
慰めが欲しかったんでも、叱咤が欲しかったんでもない。
俺の馬鹿な過ちと、俺の新たな思いを聞いて貰いたかっただけだ。
こんなことをあいつに話せるようになったとは、総司も大人になったな。
前は愛だの恋だの話しても、興味なくどこかに行っていたのによ…。
総司もヒマリに本気って訳か。
悪いが、ヒマリは俺が惚れさせるけどな。
「松田です、報告書と始末書の提出ですが、宜しいでしょうか?」
凛とした中にある、優しい声。
甘く聞こえてしまうのは、恋患いに俺が掛かっているせいか?
「入れ」
威厳を辛うじて保ちながら言うと、返事の後に綺麗な所作で障子を開け部屋に入り閉める。
こういう所で育ちの良さが出ていると毎回思う。
「お願いします」
流石仕事が早いな。
座ったままヒマリの方へ向きを変えると、書類を受け取った。
贔屓するが、他の奴等の倍は丁寧に目を通す。
時折、正座するヒマリへと視線をやると背筋を伸ばして緊張した面持ちをしている。
それが面白くてわざと眉をピクリと動かす。
ヒマリがピクリと肩を動かす。
お前を原田達のように怒るわけないだろ。
ふふっ、笑ってしまいそうだ。
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