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書き終えたヒマリが、嬉しそうに俺を見る。
やっぱりお前は犬か。
「終わりました」
「そうか、ご苦労だったな」
頬杖をついて見ていた俺へ顔を向けたヒマリの顔が徐々に赤くなる。
「ん?どうした」
「土…方副長が」
「俺が何だ?」
身動きすれば膝が付く距離に、俺の熱の込めた視線。
甘やかしてやるよと意味を込めて吊り上げた口元。
これくらいの意地悪くらい良いだろ。
今日の昼の仕事はこの書類を受け取って終わった。
さぁ、意識しろ。
お前の心を俺でいっぱいにしろ。
「何でもないなら目を閉じろ」
「えっあっ?」
「目を閉じろ」
「はい」
耐えられなかったヒマリは慌てて目を閉じる。
ほらこうすれば俺のことしか考えてないだろ。
赤く頬を染め、訳も分からず目を閉じている姿に、背中がむず痒くなる。
愛しい女。
触れたい。
ぞくりと、腹の方からヒマリを欲する気持ちが沸き上がる。
駄目だ。
怖がらせてしまう…。
触れようと伸ばした手が止まる。
俺が怯えさせたくない。
だけど、触れたい。
「土方副長、あの」
「…何だ?」
目を閉じたまま待機させてしまっていたから、心配になったのだろう。
不安にさせないように、目を開けて良いぞと適当な言い訳をつけて言おう。
「このまま、土方副長のお顔に触れても良いですか?」
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